温浴ビジネスマネジメント&プランニング
小林経営企画事務所

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《KKK通信》 温浴事業のなんでも情報発信〜



温浴コラム:『湯湯談語』


 第2話 「温泉」とビジネス



第二部:事業戦略ツールとしての「温泉」


温泉の事業価値
第一部では「温泉」が競争戦略ツールでは無くなりつつあることについて触れましたが、では温浴事業にとって「温泉開発」は必要の無いものになったのでしょうか。
とんでもありません。「温泉」は温浴事業にとって大きな事業戦略ツールとして活躍します。
温浴事業にとって「水光熱費」は「人件費」、「減価償却費」と並んで全体経費の中でも大きなウェイトを占めるコストです。
その中でも「減価償却費」はキャッシュフローを生み出す経費であることから、アウトフローから見ると「水光熱費」は温浴事業最大のコストと言えます。
この「水光熱費」を削減できるということは、損益分岐点を大幅に低下させることができる=必要集客数・必要売上高を低減できるということに直結します。
「温泉」はこの「水光熱費」を削減するために大きな役割を担うのです。
水道料金の削減効果
まずひとつめとして、温泉開発による「水道料金」への削減効果を見ていきます。
水道料金の削減対策としては「井水開発」が最も一般的ですが、市町村によっては井水の汲み上げが規制されていたり、アンモニア性窒素が高い地下水しか期待できなかったり、量を確保できなかったりすることによって井水開発が困難な場合があります。
そのような場合に「温泉」が「井水」の代わりとなりうる可能性があります。
平野部の場合、比較的柔らかい地層から豊富な単純温泉を期待することができ、「温泉の井水化」の実現性は高くなります。
1000人/日の集客がある施設では、およそ150〜200万円/月もの水道料金が掛かりますが、そのうち飲料水適用部を除く部分を全て温泉水で賄うことができる場合、100〜150万円/月程度の水道料金の削減が可能となります。
集客数に換算すると40〜60人/日相当(これだけの集客数が減っても同じ利益を確保できるということ)になります。
※上記の数値は水道料金300円/トンとした場合です。
燃料費の削減
ふたつめとして、温泉開発による「燃料費」への削減効果を見ていきます。
「温泉」と「井水」の最も異なる部分は「保有熱量」です。
「井水」の場合、15〜20℃ですが、「温泉」の場合には25℃以上の熱を保有しています。
仮に40℃の「温泉」の場合、「井水」よりも20〜25℃温度が高いためその熱量分の燃料費が削減できます。
上記と同じように、1000人/日の施設の場合、約5000トン/月の水を使用しますが、「温泉」を利用した場合、「井水」と比べて、おおよそ100〜125万円/月の燃料費が削減されます。
集客数に換算すると40〜50人/日相当(これだけの集客数が減っても同じ利益を確保できるということ)になります。
※上記の数値は100円/10000kcalの燃料とした場合です。また放熱温度ロスは見ていません。
初期投資の削減
最後に、温泉を掛け流し利用できた場合に限りますが、「温泉」によって初期投資額を軽減できる効果があります。
浴槽を「掛け流し浴槽」とすることにより、濾過設備および給湯設備が無くなります。
ひとつの濾過系統で500〜1000万円程度の初期投資費が削減されます。
ただし、ここで注意点があります。
「温泉」を掛け流しで使用する場合には、下水使用料が莫大に掛かるおそれがあります。
浄化槽による水路放流の場合には問題ありませんが、公共下水を利用する場合には検討する必要があります。
温泉への期待
以上のように、「温泉」には大きなコスト削減効果があります。
特に、見落とされがちなのは「燃料費」の削減効果です。
年中高い温度を期待できる「温泉」は、燃料費の膨らむ寒い冬には、より大きな効果を得られます。
もちろん、「温泉」の質や量などによって、どの施設もが同じような効果を得られる訳ではありません。
しかし、「温泉」はいまや集客のためでなく、事業採算性を高めていくための事業戦略ツールとして捉えていくことが重要なのは間違いありません。
もし、皆様の施設が温泉を保有しているのなら、また温泉開発の可能性があるのなら、すぐにでも検討してみる価値は十分にあると思いませんか。




KKK通信
COLUMN
温浴コラム『湯湯談語』
【過去の掲載】
第1話
衆浴場の歴史と変遷
第2話
「温泉」とビジネス
第一部
温泉競争戦略
第二部
事業戦略ツールとしての「温泉」
第3話
温泉施設の投資と施設計画

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